クロード・モネ《睡蓮》1908年 油彩、カンヴァス ウスター美術館
Museum Purchase, 1910.26/Image courtesy of the Worcester Art Museum
日本初公開多数!ウスター美術館コレクション
東京都美術館 2024年1月27日(土)~4月7日(日)
海を越えて花開いた”アメリカ印象派”
第1回印象派展から150周年を迎える2024年、印象派がヨーロッパやアメリカへもたらした衝撃と影響をたどる展覧会が開催されます。
アメリカ・ボストン近郊に位置するウスター美術館は、1898年の開館当初から印象派の作品を積極的に収集してきました。今回ほとんどが初来日となる同館の印象派コレクションを中心に、日本でもよく知られるモネ、ルノワールなどフランスの印象派にくわえ、ドイツや北欧の作家、国際的に活動したサージェント、さらにはアメリカの印象派を代表するハッサムらの作品が一堂に会します。これまで日本で紹介される機会の少なかった、知られざるアメリカ印象派の魅力に触れることのできる貴重な機会となります。
チャイルド・ハッサム《花摘み、フランス式庭園にて》1888 年 油彩、カンヴァス ウスター美術館
Theodore T. and Mary G. Ellis Collection, 1940.87/Image courtesy of the Worcester Art Museum
第1章 伝統への挑戦
急速に近代化する19世紀、画家たちも新しい主題や技術を探求します。19世紀前半、農村に移り住んだ画家たちは、農民の生活や田園風景を主題に選びました。それまで風景は、歴史や神話・聖書の物語、あるいは名所旧跡を主として描かれるものでした。しかし、バルビゾン派やレアリスムの画家たちは、祖国フランスに目を向け、身の回りの風景に注目したのです。これは、歴史画を頂点とする伝統的な絵画のヒエラルキーを覆すものでした。また、アメリカにおいても、自国の雄大な自然に対する関心が高まり、「アメリカ的な」風景が人気を博します。本章では、大西洋の両岸における、こうした印象派の先駆けとなる動きをご紹介します。
ウィンスロー・ホーマー《冬の海岸》1892年 油彩、カンヴァス ウスター美術館
Theodore T. and Mary G. Ellis Collection, 1940.60/Image courtesy of the Worcester Art Museum
ホーマーは独自に戸外制作を始め、画業の後半には海や海と対峙する人々を描くことに注力した。画面を対角に区切るように、荒々しい海と冬の海岸が描かれる。打ち寄せる荒波には激しい動きを表す大胆な筆づかいが見られ、こうした表現に印象派との共通項が認められる。画面左下の積雪には足跡が残され、人の気配を感じさせる。
第2章 パリと印象派の画家たち
1874年4月、パリのカピュシーヌ大通り35番地にて、のちに「印象派」と呼ばれる画家たちによる初めての展覧会が開催されました。クロード・モネ、ピエール=オーギュスト・ルノワール、カミーユ・ピサロらは、サロン(官展)への出品をやめ、自分たちで作品を展示する場をつくり出したのです。彼らはアカデミーの伝統から離れ、目に映る世界をカンヴァスに捉えようと、アトリエを出て、鮮やかな色彩を採用し、大胆な筆づかいを試みました。また、大都市パリには、各地から芸術家が集います。本章ではフランス印象派にくわえ、彼らと直接に交流をもち影響を受けたアメリカ人画家、メアリー・カサットやチャイルド・ハッサムの作品もご覧いただきます。
カミーユ・ピサロ《ルーアンのラクロワ島》1883年 油彩、カンヴァス ウスター美術館
Gift from the Estate of Robert W. Stoddard, 1998.213/Image courtesy of the Worcester Art Museum
フランス北部の都市ルーアンは、大西洋とパリをつなぐ水運拠点であり、モネやシスレーらもこの地で制作を行った。1883年に初めてルーアンに滞在したピサロは、産業化する新しい都市の情景へと目を向けた。煙を出す水辺の工場の煙突や行き交う蒸気船は、近代化する街と大気の効果に魅了されたピサロにとって格好のモティーフとなった。
第3章 国際的な広がり
パリを訪れ、印象派に触れた画家たちは、鮮やかな色彩、大胆な筆触、同時代の都市生活の主題などを特徴とする、新しい絵画の様式を自国へ持ち帰ります。印象派の衝撃は急速に各地へ広がりますが、多くはフランス印象派に固執するものではなく、各地で独自に展開してゆきます。画家たちの往来・交流により、印象派と分類されない画家や、フランスを訪れたことのない画家にも、印象派の様式は波及しました。もちろん日本も例外ではありません。明治期にパリに留学した画家らによって、印象派は日本にもすぐに伝えられました。本章では、国内の美術館に所蔵される黒田清輝や久米桂一郎らの明治期から大正期の作品を展示し、日本における印象派受容の一端もたどります。
黒田清輝 《草つむ女》1892年 油彩、カンヴァス 東京富士美術館
©東京富士美術館イメージアーカイブ/DNPartcom Image courtesy of Tokyo Fuji Art Museum
黒田は、1893年に27歳で帰国するまでおよそ9年間をフランスで過ごした。アカデミックな教育を受けながらも、バルビゾン派や印象派などにも触れ、帰国とともに新しい絵画表現を日本にもたらした。穏やかな光に満ちた本作には、明るい色調や対象にあわせた自由な筆づかいが採用されており、印象派への関心が見て取れる。
第4章 アメリカの印象派
1880年代半ばになると、アメリカの画商や収集家はヨーロッパの印象派に熱い視線を送るようになります。多くのアメリカの画家がヨーロッパに渡り、印象派の様式を現地で学びました。いち早くそれを自らの制作に採り入れたウィリアム・メリット・チェイスやチャイルド・ハッサムは、アメリカに戻ると画家仲間や学生たちにも新しい絵画表現を広めました。アメリカにおける印象派は、それぞれの画家の独自の解釈を交えて広がってゆき、地域ごとに少しずつ異なる様相を見せます。フランス印象派に忠実にあろうとする画家がいる一方、その様式にアレンジをくわえ、アメリカらしい田園風景や家庭内の情景を捉えようとする画家たちも登場しました。
ジョゼフ・H・グリーンウッド《リンゴ園》1903年 油彩、カンヴァス ウスター美術館
Bequest of Ruth G. Woodis, 2017.25/Image courtesy of the Worcester Art Museum
グリーンウッドが得意とした地元ニューイングランドの穏やかな風景。明るい色調に、光の揺らめきを感じさせる、かすれるような筆触によって牧歌的な晩春の美しさがよく表現されている。グリーンウッドは印象派の表現を採り入れたが、ハッサム同様、「印象派」と呼ばれることを拒み、そうした様式分類にとらわれないことを望んだ。
第5章 まだ見ぬ景色を求めて
印象派の衝撃を受けた画家たちは、新しい絵画の探究をつづけてゆきます。フランスのポスト印象派は、光への関心を継承しつつも自然主義を脱却し、印象派に影響を受けたドイツの画家たちの作品には、自らの内面の表出を重視する表現主義の芽生えが認められます。アメリカでは、トーナリズム(色調主義)の風景画が人気を博します。南北戦争の混乱がつづくなか、目に見えないものの表現を重視し、落ち着いた色調で描かれるこうした風景は、人々の心の安らぎとなりました。また、印象派の様式は、画家たちがさまざまな地で制作することを可能としました。戸外制作の技術を活用し、画家たちは大自然の驚異を見せるアメリカ西部へ分け入り、初めて目にする景色をもカンヴァスに留めてゆきました。
ポール・シニャック《ゴルフ・ジュアン》1896年 油彩、カンヴァス ウスター美術館
Gift from the Chapin and Mary Alexander Riley Collection, 1964.27/Image courtesy of the Worcester Art Museum
シニャックが家を買い、ヨットを置いた南仏のリゾート地ゴルフ・ジュアンが遠景に見える。彼は光学や色彩理論にもとづく点描技法を採用したが、1890年代中頃からしだいに筆触は大きく、色彩は自由になってゆく。地中海の強い日差しと鮮やかな色彩だけでなく、平和で穏やかな日々を慈しむような画家の想いも伝わってくるようだ。
開催概要
展覧会名: | 印象派 モネからアメリカへ ウスター美術館所蔵 |
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主催: | 公益財団法人東京都歴史文化財団 東京都美術館、日本テレビ放送網、日テレイベンツ、BS日テレ、読売新聞社 |
後援: | アメリカ大使館 |
協賛: | 光村印刷 |
協力: | NX日本通運、TOKYOMX、TOKYOFM |
開室時間 | 9:30-17:30金曜日は20:00まで (入室は閉室の30分前まで) |
休室日 | 月曜日 ※ただし3/11(月)、3/25(月)は開室 |
会場 | 東京都美術館 〒110-0007 東京都台東区上野公園8-36 |
This exhibition was organized by the Worcester Art Museum
大学生・専門学校生1,300円 高校生以下無料
※土曜・日曜・祝日及び4月2日(火)以降は
日時指定予約制(当日空きがあれば入場可)